最高裁判所第三小法廷 昭和43年(オ)679号 判決 1968年10月08日
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告代理人宮崎忠義の上告理由第一点について。
白地手形はその補充があるまでは未完成の手形に過ぎないから、それによつて手形上の権利を行使するに由ないものであるし、白地手形による支払のための呈示は無効であり、その呈示期間経過後の補充により右呈示が遡つて有効になるものでないことは当裁判所の判例とするところである(昭和三一年(オ)第五二九号同三三年三月七日第二小法廷判、決民集一二巻三号五一一頁、昭和四一年(オ)第三二九号同四一年六月一六日第一小法廷判決、民集二〇巻五号一〇四六頁参照)。右につき、受取人欄白地の手形を別異に解することはできない。所論原判決の判断は正当として是認することができる。原判決に所論の違法はなく、論旨は、独自の見解に立つて、原判決を非難するに帰し、採ることはできない。
同第二点について。
所論の点に関する原判決の事実認定は、その挙示する証拠関係に照らし、正当として是認することができる。その判断の過程にも違法はない。原判決に所論の違法はなく、論旨は、独自の見解に立つて、適法になされた原審の証拠の取捨判断、事実の認定を非難するに帰し、採ることはできない。
よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 田中二郎 裁判官 下村三郎 裁判官 松本正雄 裁判官 飯村義美)